「Google Drive の外部共有、全部でどのくらいありますか?」と聞かれて、答えられる情シスは少ない。
ある ISMS 取得済みの会社で、Drive の再編の前に外部共有を棚卸しした。最初は、毎月の自動レポートに使っていた監査ログの数字を土台にするつもりだった。だが、監査ログでは「過去に共有した記録」しか見えない。保持期間より前の共有は出てこない。そこで、Drive API で「いま、誰に見えているか」を全量で読む方式に切り替えた。結果は、想定よりずっと多かった。
この記事でわかること
- ▶ 監査ログで棚卸しすると漏れる理由
- ▶ 読み取り専用・最小権限のサービスアカウントで全量を読む設計
- ▶ 棚卸しで見えたもの(共有の起点・管理者アカウント・放置された共有ドライブ)
- ▶ 結果を Drive 再編の範囲決めにどう使うか
▼監査ログではなく「いまの権限」を読む
外部共有の棚卸しには、2つのやり方がある。
| 方式 | わかること | 弱点 |
|---|---|---|
| 監査ログ(Reports API) | いつ、誰が、何を共有したか(イベント) | ログの保持期間より前の共有が出てこない。共有を解除したかどうかも追いにくい |
| Drive API | いま、そのファイルが誰に見えているか(状態) | 全ユーザーのドライブを読むので、権限の設計と承認が要る |
毎月の変化を追うなら監査ログでいい。ISMS の月次レビューの証跡にもなる。だが「棚卸し」は、いまの状態を正しく知ることが目的だ。何年も前に共有して、そのまま放置されているファイルこそ見つけたい。だから Drive API で状態を読む。
▼最小権限のサービスアカウントで読む
全社のドライブを読むので、権限の設計には気を使った。
- ▶ 会社の GCP 組織の下に、棚卸し専用のプロジェクトとサービスアカウントを作る
- ▶ ドメイン全体の委任で渡すスコープは2つだけ:ファイルのメタデータの読み取り(
drive.metadata.readonly)と、ユーザー一覧の読み取り(admin.directory.user.readonly) - ▶ ファイルの中身は読めない。名前・オーナー・共有先だけを読む
- ▶ 委任の登録は、先方の責任者の承認を取ってから
共有ドライブの一覧を API で取るには、もう一段広いスコープ(drive.readonly)が要る。そのためだけに権限を広げたくないので、共有ドライブの一覧は管理コンソールから取った。少し手間でも、権限を最小にする方を選んだ。
もう1つ、社内ドメインの扱いを最初に決めておく。会社によってはドメインが複数ある。どれを「社内」として扱うかを決めないと、社内の別ドメインとの共有がすべて「外部共有」に数えられてしまう。
▼棚卸しで見えたもの
全量を取得した結果、外部から見られる状態の共有の起点(共有設定がされたファイル・フォルダ)は数千件あった。そのうち「リンクを知っている全員が閲覧可」も数千件。フォルダごと共有されているものが多いので、その配下まで含めると、外部から見られるファイルの数はさらに桁が上がる。
| 見えたこと | 意味 |
|---|---|
| 共有の起点が最も多いのは、管理者アカウントだった | 管理者アカウントが日常の作業にも使われていた。特権アカウントの運用の問題でもある |
| 名前から見て機密性が高そうなフォルダも、全員公開になっていた | 中身は読んでいない(読めない権限にしている)。オーナーに確認してもらう |
| 2年以上更新のない共有ドライブが数十個。メンバーがいない共有ドライブもあった | 使われている共有ドライブの中でも、2年以上更新のないフォルダが全体の容量の約4割 |
| 停止中のユーザーのドライブは読めなかった | 停止したユーザーのファイルの共有は、別の手段で確認が要る |
数字の見せ方に注意
「全員公開が数千件」は、それだけ聞くと事故に見える。だが多くは、取引先との共同作業や公開資料のために意図して共有したものだ。社内に報告するときは、件数だけでなく「起点の数」「誰がオーナーか」「最終更新はいつか」で分けて見せる。犯人探しではなく、整理の優先順位を決める材料にする。
▼結果を Drive 再編の範囲決めに使う
この棚卸しは、Drive 再編の前段だ。結果から、年内にやる範囲を次のように切った(案)。
- ▶ 新しい階層の器(共有ドライブ)を作る
- ▶ マイドライブから、業務ファイルを共有ドライブへ移す
- ▶ 既存の共有ドライブは棚卸しまで。放置されたドライブの整理は来期
順序も大事だ。外部共有の制限は、ファイルの仕分けが終わってからかける。先に制限すると、取引先との連携が切れる。社内への説明は、裏の目的がセキュリティでも「情報が1か所にまとまって探しやすくなる、AI で社内の知識を使いやすくなる」という生産性の話として伝えた方が、部署の協力が得やすい。
▼まとめ
- ▶ 監査ログは「変化」を、Drive API は「いまの状態」を見る。棚卸しは後者
- ▶ 専用のサービスアカウントに、メタデータの読み取りだけを委任する
- ▶ 社内ドメインの扱いを最初に決める
- ▶ 件数だけで報告しない。起点・オーナー・更新日で分けて優先順位を決める
- ▶ 外部共有の制限は、仕分けが終わってから
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