- SaaSアカウント棚卸し台帳の作り方(縦軸・横軸の設計)
- スプレッドシートで管理する理由と限界点
- 退職・業務委託解除時のアカウント削除漏れを防ぐ仕組み
- 業務委託アカウントが特に見落とされやすい理由と対処法
SaaSが増えるほど「誰が何を使っているか」の把握が難しくなる。気づいたら退職者のアカウントがそのまま残っていたり、業務委託が終了したのにライセンスが生きていたりする。
この記事では、SaaSアカウント棚卸しの台帳設計から、退職・業務委託解除時のオフボーディングフローまでを一気に整理する。
▼まず「棚卸し」のイメージを持つ
アカウント棚卸しの基本構造はシンプルだ。縦軸にユーザー情報、横軸にサービス名という表を作り、各セルに「ライセンスがあるか否か(◯/✗)」を入れていく。
| 氏名 | メールアドレス | 雇用形態 | GWS | Slack | Okta | Figma | SmartHR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 山田 太郎 | taro@example.com | 正社員 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 鈴木 花子 | hanako@example.com | 業務委託 | ○ | ○ | ✗ | ✗ | ✗ |
| 田中 次郎 | jiro@example.com | アルバイト | ○ | ○ | ✗ | ✗ | ✗ |
ユーザーの基本情報(氏名・メールアドレス・雇用形態・所属)はSmartHRやHRシステムから引っ張ってくるのが楽だ。各サービスからもユーザーリストをエクスポートして、VLOOKUPやINDEX/MATCHで突合すれば「このサービスにアカウントが存在するかどうか」を自動で返せる。
GWSやSlackなど主要なSaaSはAPIが公開されているため、スクリプトを組めばユーザーリストの取得・突合を自動化できる。ただし最初はスプレッドシートで手動管理から入ることを強くすすめる。理由は後述。
▼なぜ最初からシステムを入れないのか
AdminaやジョーシスのようなSaaS管理ツールは確かに便利だ。しかし最初からツールを入れることはすすめていない。理由は3つある。
- ▶ 作業の実態が掴めないまま自動化すると、何を自動化しているかわからなくなる:手でやってみて初めて「どこに工数がかかるか」「どこでミスが起きるか」がわかる
- ▶ 前後のプロセスを理解せずにツールを入れると、ツールに振り回される:入退社フローや承認フローとの連携が設計できていないまま入れると、かえって管理が複雑になる
- ▶ ツール自体もSaaSが一個増えるジレンマがある:費用対効果が出る規模になってから導入を検討すれば十分
まずスプレッドシートで運用してみて、「この作業が毎月しんどい」「ここでミスが起きた」という実感が積み上がってから、ツール導入を検討するのが正しい順番だ。
▼棚卸しを定期的に回す
台帳を作っただけでは意味がない。定期的に更新する仕組みが必要だ。
各SaaSの管理画面からCSVエクスポートし、台帳と突合する。
サービス側にはあるが台帳に存在しないユーザーが退職者・管理漏れの候補になる。
削除前に所管部署に確認する。「本当に使っていないか」を確認せずに削除すると後でトラブルになる。
▼オフボーディングフロー:退職・業務委託解除時の設計
棚卸しの定期メンテナンスと並行して重要なのが、退職・業務委託解除をトリガーにしたアカウント削除フローだ。これがないと、棚卸しのたびに「誰がいつ辞めたか」を情シスが調べ回ることになる。
正社員の退職対応
絶対にやるべきことはHRから情シスへの申請フローをワークフロー化することだ。SlackでもNotionでもいいが、退職が確定したタイミングで情シスに通知が来る仕組みを作る。これがないと情シスが自分からキャッチしに行く必要が生じる。会社が40〜50名を超えると、口頭での連携だけでは確実に抜け漏れが起きる。
□ 退社日の確認(Slackワークフロー等で通知を受け取る)
□ IdP(Okta / HENNGE One等)のアカウント無効化
□ Google Workspaceアカウントの停止・データ移管
□ 各SaaSのアカウント削除(Slack / Figma / Zoom等)
□ PCの回収・ワイプ確認
□ 台帳の更新
業務委託解除の対応——ここが一番見落とされる
正社員の退職は人事から連絡が来やすいが、業務委託の解除は情シスに情報が届きにくい。契約解除は法務や事業部が管理しているため、情シスが把握するタイミングが遅れるか、そのまま誰も連絡しないケースがある。
理想は業務委託解除をトリガーに事業部 or 法務からワークフローを流す仕組みを作ることだ。ただし最初のうちは「誰に申請させるか」が定まらないことも多い。その場合の現実的な対処法はこうだ。
・最終ログインが半年以上前のユーザーは確認対象として所管部署に問い合わせる
・チャットツール(Slack等)での発言が長期間止まっているユーザーをマークする
・契約管理台帳と照合して「契約終了日」を過ぎているアカウントを棚卸しのたびに確認する
Google環境であれば、管理コンソールで最終ログイン日時が確認できる。半年ログインがないユーザーがいたら、その業務委託の所管部署に「まだ使っていますか?」と確認しに行くだけでも、放置アカウントをかなり減らせる。
▼まとめ:アカウント管理の設計原則
- ▶ 台帳の構造は「縦軸:ユーザー」×「横軸:サービス」。SmartHR等のHRシステムと各SaaSのユーザーリストを突合する形で作る
- ▶ 最初はスプレッドシートで手動管理から入る。作業の実態を掴んでからツール導入を検討する
- ▶ 退職情報はHRからワークフローで受け取る仕組みを作る。口頭連携では必ず漏れが起きる
- ▶ 業務委託は特に注意。最終ログインの定期確認と、所管部署への問い合わせフローを持っておく
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