Entra ID のグループ整理は、退職者より先に所有者を見る

退職した人のアカウントは無効にした。ライセンスも外した。それで終わりだと思っていないだろうか。

前任ベンダーから情シスを引き継いだ会社(30名規模)で、Microsoft 365(Entra ID)のグループを棚卸しした。退職者が、無効になったアカウントのまま、いくつものグループのメンバーと所有者に残っていた。さらに、前任ベンダーの担当者しか所有者がいないグループが出てきた。この記事では、グループの整理の順序と、あわせて決めた命名ルール・ライセンスのグループ付与について書く。

この記事でわかること

  • ▶ 退職者を「外すだけ」ではいけないグループがある理由
  • ▶ 洗い出し → 計画 → 実行を分けた、グループ整理の進め方
  • ▶ セキュリティグループの命名ルール
  • ▶ ライセンスを個別付与からグループ付与に切り替える手順

▼背景:無効アカウントは、グループに残り続ける

Entra ID では、アカウントを無効にしてもグループの所属は自動では外れない。だから、退職者が何年分もグループに残る。普段は困らないが、次の場面で問題になる。

  • ▶ アカウントを誤って有効に戻したとき、過去の権限が全部戻る
  • ▶ グループのメンバー数がずれて、「誰がアクセスできるか」の説明ができない
  • ▶ 所有者が退職者だけになったグループは、誰も管理できない

この会社のセキュリティグループは約30件。洗い出すと、退職者が所属しているグループが十数件あった。

▼「外すだけ」ではいけないグループ

退職者を外す前に、グループを3種類に分けた。

グループの状態 対応
ほかにも所有者がいる 退職者を外すだけ
退職者を外すと、所有者がいなくなる 先に新しい所有者を入れてから外す
前任ベンダーの担当者しか所有者がいない 社内の担当者を所有者に加える。ベンダーのアカウントを外すのは、ID の付け替えと一緒に行う

3つ目は、引き継ぎで見落としやすい。VPN の利用者グループ、基幹システムの開発用、倉庫用、退職者データのアーカイブ用など、業務の要所にあるグループほど、構築したベンダーが所有者のままだった。ベンダーとの契約が終わってアカウントが消えたら、誰も管理できないグループになる。

新しい所有者には、社内の窓口担当・情シス(自分)・総務の共有アドレスの3つを入れた。1人に寄せないためだ。ここで1つ注意がある。Microsoft 365 グループは所有者をメンバーにも追加するが、セキュリティグループは所有者にだけ入れる。セキュリティグループのメンバーにすると、そのグループに付いているアクセス権が付いてしまうからだ。

▼洗い出し → 計画 → 実行を分ける

作業は3段に分けた。

STEP1 洗い出し(読み取りのみ):無効アカウントが所属するグループと、グループごとの所有者を書き出す

STEP2 計画:「どのグループから誰を外すか」「誰を所有者に足すか」を CSV にして、先方の確認を取る

STEP3 実行:計画の CSV を読んで、Graph PowerShell で一括で反映する。まず確認だけのモードで流し、問題がなければ実行する

計画を CSV にしておくと、何を変えたかの記録がそのまま残る。今回は所有者の追加が60件、退職者の除外がメンバーから85件・所有者から32件。エラーは0件だった。

ただし、Graph では変えられないものもあった。メールの配布リストは Exchange 側の管理なので、Exchange 管理センターで外す。全部が1つのツールで片づくわけではない。

スクリプトの小さな落とし穴

PowerShell は変数名の大文字・小文字を区別しない。Graph の URL を入れた変数と、グループを入れた変数の名前が大文字・小文字違いだけだったため、値が上書きされて誤動作しかけた。確認だけのモードで流して気づいた。いきなり本番で流さない。

▼セキュリティグループに命名ルールを決めた

グループの棚卸しをしてわかったのは、名前からグループの用途がわからないことだ。拠点名だけのもの、「intune tester」のような検証名、日本語と英語が混在している。

そこで、新しく作るセキュリティグループには命名ルールを決めた。

  • ▶ 頭に SG- を付ける(アクセス制御・アプリの割り当て・ライセンス付与用)
  • ▶ SG-<対象>-<用途> の形にする(例:SG-License-M365BP、SG-ChatGPT-M365連携)

既存のグループの名前を一斉に付け替えるかは、まだ決めていない。名前を変えると、そのグループを参照しているポリシーや手順書の確認が要るからだ。まず新しいものからルールに乗せる。

▼ライセンスをグループ付与に切り替えた

同じタイミングで、Microsoft 365 のライセンスを個別付与からグループ付与に切り替えた。入社時は「グループに入れる」、退職時は「グループから外す」だけで済むようになる。

① ライセンス付与用のグループを作る

② いま個別に付与されている人を、全員グループに入れる

③ グループにライセンスを割り当てる

④ 全員が「グループ経由で有効」になったのを確認する

⑤ 最後に個別の付与を外す

順序を逆にして、先に個別の付与を外すと、その瞬間にメールや Office が使えなくなる人が出る。「新しい経路で有効になったことを確認してから、古い経路を外す」。ライセンスの付け替えと同じ考え方だ。

切り替えてみると、ライセンスの席が空きゼロだったことも見えた。テスト用や管理用のアカウントにもライセンスが付いていて、それも席を使っている。入社の予定があるなら、先に追加購入の段取りが要る。

▼まとめ

  • ▶ アカウントを無効にしても、グループの所属は残る
  • ▶ 外すと所有者がいなくなるグループは、先に所有者を足す
  • ▶ 前任ベンダーしか所有者がいないグループを、引き継ぎの初期に洗い出す
  • ▶ 洗い出し・計画・実行を分け、計画を CSV で残す
  • ▶ ライセンスのグループ付与は「新経路で有効を確認 → 旧経路を外す」
📄 前任ベンダーから情シスを引き継ぐときの進め方はこちらの記事で書いています。
📄 Microsoft 365 のライセンス構成の見直しはこちらの記事で解説しています。

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