Google Workspace の未使用アカウント、停止か削除かの前に「誰に聞くか」

Google Workspace(以下 GWS)のセキュリティ点検で、90日以上ログインのないアカウントの一覧を出した。12個あった。どれが誰の何のためのものか、一覧からは分からない。ライセンスも減るし、消せばすっきりする。

消さなかった。週次の定例に持っていったのは「消していいですか」ではなく、「どなたに確認すればいいですか」という問いだ。その場で12個は、残す2つ、連絡してから消す2つ、そのままの残りに分かれた。削除はまだしていない。ある会社(約90名)での、消す前の判断までの途中経過を書く。

この記事でわかること

  • ▶ 最終ログインの一覧が「消す候補」ではなく「聞く候補」である理由
  • ▶ 「消していいか」の前に「誰に聞くか」を決めたら、12個がどう分かれたか
  • ▶ 停止と削除の違い(費用・メール・戻し方)
  • ▶ 聞くことを「ファイルか、メールか」に絞る連絡と、GWS の外まで含めた消す前のチェック

▼最終ログインの一覧は「消す候補」ではなく「聞く候補」

点検は、先方から「セキュリティの設定が昔のままなので、一通り見てほしい」と頼まれて始めた。管理コンソールと読み取り専用のスクリプトで設定とアカウントを書き出し、その中に「90日以上ログインなし」が12個あった。

この一覧には、ログインしないのが正常なアカウントが混ざる。メール配信の送信元に使うだけのアカウントは、誰もログインしない。それでも毎日働いている。最終ログインの古さは「調べる理由」にはなるが、「消す理由」にはならない。

もう1つ、定例で先方の窓口(役員)から出た話がある。前に一度アカウントを消したら、必要なファイルまで消えてしまい、復元したことがあるという。消したあとで困るのは、消した側ではなく、そのアカウントの中身を使っていた誰かだ。

自分はこの会社に情シスとして外から入って1か月ほどで、どのアカウントを誰が何のために作ったのかを知らない。前任の管理者は、定例の数日前に引き継ぎを終えて離れていた。一覧の列で言えば、「最終ログイン」は埋まっていても、「誰が作ったか」「何に使っているか」は空欄のままだった。

▼「消していいか」ではなく「誰に確認すればいいか」を聞いた

週次定例の議題を5分だけもらい、「ご判断いただきたいこと」にはこの1行を書いた。

整理(停止・グループへの切り替え・削除)の対象を、どなたに確認すればよいか

「消していいですか」とは書いていない。一覧を見せると、その場で次の3つの扱いに分かれた。

アカウント 扱い 確認先 定例で出た話
メール配信用の送信専用アカウント(ノーリプライ) 残す 不要 配信用のシステムアカウントなので消さない
社外の担当者用のもの 残す 不要 残す、で決まった
2025年に使い終えて、消し忘れていたもの 連絡してから削除 営業側 必要なファイルがないかを営業側に確認してから消してよい
終了した旧サービス用 連絡してから削除 旧サービスに関わっていた部長(もう1人の部長にも) メールはもう要らないはず。要るなら転送(受け取り先の手配)してから消す
残り(テスト用など) そのまま なし(連絡待ち) 使っている前提でそのまま。要らなくなれば連絡が来るので、そのときに消す

12個のうち、こちらから消しに行くのは2つだけになった。

後から並べ直すと、分かれ目は3つ

定例で順番を立ててから判断したわけではない。決まった扱いを後から並べ直すと、分かれ目は次の3つになる。

  1. 仕組みが使っているか:配信の送信元のように、ログインしないのが正常なもの → 残す
  2. 使っている人がその場で分かるか:分かる → 残す。分からないが、使っている部署がありそう → そのまま(向こうからの連絡を待つ)
  3. 使い終えたと分かっているか:分かっている → 中身を今後使う人に聞いてから消す

こちらから消すのは3つ目だけだ。最終ログインの古さは、どの分かれ目にも出てこない。

使っていそうな部署があるものは、こちらから消さない

「そのまま」の残りには期限を付けていない。持ち主の側から「要らなくなった」と連絡が来たら消す、という決め方だ。

ただ、連絡が来る保証はない。定例で決めたのは連絡待ちまでで、来なかったときにいつ見直すかは、まだ決めていない。この「そのまま」の束は、次に一覧を出し直したときにも同じ顔ぶれで残っている可能性が高い。ここは宿題として残っている。

「停止じゃだめなの?」

議題で聞いたのは、停止か削除かではなく確認先だった。選択肢には「停止」も入れていた。停止と削除は、費用・メール・戻し方が違う(Google の公式ヘルプで確認。2026年10月時点)。

停止 削除
ライセンス費用 かかり続ける(フレキシブル・年契約とも) フレキシブルならすぐ減る。年契約は更新まで減らない
新しいメール 受け取らない 宛先がなくなる
中身 残る(本人は見られない) 移さなかったデータ(メール・ドライブとも)は、削除から20日を過ぎると戻せなくなる
戻し方 再開すればそのまま 削除から20日以内なら、管理コンソールから復元できる(ライセンスの空きが要る)

今回の2つは、停止を挟まず、連絡してから削除する方針で固まった。停止は、持ち主が分からないまま止めておく置き場所にはなる。ただ、止めているあいだも費用はかかり続けるので、停止を使うなら、再開するか削除するかを決める日まで、一緒に決めておきたい。

なお、中身を残したまま費用を下げる「アーカイブ」用のライセンス(Archived User)もあり、Business Starter・Standard でも、管理コンソールから買える場合がある。今回の議題の選択肢には入れていない。

▼聞く相手は「中身を使う人」、聞くことは「ファイルか、メールか」

定例で先方が挙げた確認先は、2つとも、残っている中身(ドライブのファイル・届くメール)を今後使う可能性がある人だった。アカウントの名前から連想する部署ではない。

聞くことも絞った。連絡の下書きはこうだ。

  • ▶ 使い終えて消し忘れていたもの → 営業側へ:ドライブやメールに、営業で今後も必要なファイルが残っていないか。なければそのまま削除、あれば共有ドライブへ移してから削除(移す先を教えてもらう)
  • ▶ 終了した旧サービス用 → 関わっていた部長へ:①このアカウントに届くメールを、今後も受け取る必要があるか(あれば、消した後もそのアドレス宛てのメールが別の人に届くようにしてから削除)②残すべきファイルはあるか

どちらも、Yes / No で答えられる1〜2個にした。「ご確認ください」とだけ送ると、受けた側は何を見ればいいのか分からない。

見出しの「メール」は、これから届くメールのことだ。残っているメールは、ファイルと同じ「中身」として聞いている。

メールを分けて聞くのには、仕様の事情もある。削除の画面で別の人に移せるのは、ドライブとカレンダーなど(特権管理者の操作の場合)で、メールは入っていない。残っているメールが要るなら、削除の前に別のアカウントへ移す。これから届くメールが要るなら、受け取り先を削除の前に決めておく。アカウントの中に設定した転送に頼るのは避けたい。削除した後も働くかは、公式ヘルプに書かれていない。

中身を使う人にたどり着けるなら、聞き方はここまで絞れる。棚卸しで「まだ使っていますか?」と所管部署に聞く流れは、SaaS アカウント棚卸しの全体設計で書いた。今回は、その「所管部署」が一覧からは分からないアカウントの話だ。

期限を書く。削除から20日は戻せる

連絡の下書きの最後には「〈期限〉までにお返事がなければ、不要として削除を進めます」と入れた。期限の日付はまだ入れていない。

期限を付けるのは、使い終えたと分かっているこの2つだけだ。

期限で切っても、すぐに取り返しがつかなくなるわけではない。削除から20日以内なら、管理コンソールから戻せる。この会社でも、前に一度消して戻している。ただし、戻せるのは20日以内に「要る」と気づいた場合だけで、フレキシブルプランでライセンスを減らしていると、戻すときに空きが要る。20日は安全網であって、確認の代わりにはならない。

▼「消す」の範囲は GWS の外まで

前任の管理者が残したメモに、人が退職したときのアカウント削除の手順があった。それを今回の2つにも当てはめて、削除の前にやることを並べた。

削除の前に確かめること

  • ▶ そのアカウントが主催者のカレンダー予定:削除すると、主催者のいない予定として相手のカレンダーに残り、誰も変更・キャンセルできなくなる。残っていれば主催者を変えるか、消しておく。特権管理者なら、削除の画面でカレンダーを別の人に移すこともできる
  • ▶ 届くメールの受け取り先:要ると言われた場合だけ、削除しても届き続ける形で手配する
  • ▶ ドライブ:基本は残さない。要るものだけ共有ドライブか、管理部門だけが入れる退避用のアカウントへ移す
  • ▶ メールを送る外部サービス:この会社はメールの誤送信防止サービスを使っていて、送信するアカウントはそちらにも登録がある。登録があれば、そちらも消す
  • ▶ 社内のグループ一覧:グループのメンバーになっていれば、Notion で管理しているグループ一覧も直す
  • ▶ 社外の窓口への連絡:メールのセキュリティを社外の窓口が見ていて、入退社のたびにメールで知らせる決まりがある。人ではないアカウントも対象かは確認できていないので、迷ったら送る
  • ▶ 依頼元への報告:消したもの・残したもの・メールの受け取り先を手配したかを、点検を頼んできた側に返す

メモにはないが、ドライブの社外共有と、社外のサービスのログイン ID に使われていないかも見ておきたい。

GWS の管理コンソールだけを見て消すと、外部サービスの登録、社内の台帳、社外の窓口への連絡が残る。「消す」は GWS の中で終わらない。社外共有の洗い出しは、Google Drive の外部共有を全件調べた記事で書いている。

▼まとめ

  • ▶ 最終ログインの一覧は「聞く候補」。ログインしないのが正常なアカウントがあり、古さは消す理由にならない
  • ▶ 「消していいか」の前に「誰に確認すればいいか」を聞き、先方に決めてもらう。今回は12個のうち、こちらから消すのは2つになった
  • ▶ 停止は、中身を残したまま費用がかかり続ける置き場所。今回の2つは停止を挟まず、連絡してから削除する
  • ▶ 聞く相手は中身を使う人。聞くことは「ファイルか、メールか」に絞り、期限は使い終えたものにだけ付ける
  • ▶ 消す範囲は GWS の外(カレンダー・外部サービス・社内の台帳・社外の窓口)まで
📄 退職をきっかけにしたアカウント削除の流れと台帳の作り方はこちらの記事で書いています。
📄 消す前に見ておきたい社外共有の棚卸しはこちらの記事で書いています。

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