Apple BusinessでChrome Enterprise Tokenを配布しようとしたら署名の壁に当たった話【検証実録】
この記事でわかること
  • Chrome Enterprise Enrollment Tokenとは何か・何ができるか
  • Jamfなし環境でTokenを配布できないか検証した過程
  • Apple BusinessのmacOSパッケージ機能でpkg配布を試みた実録
  • 署名なしpkgという壁に当たって詰まったところまでの正直な記録

「Jamf ProやIruがない環境でChrome Enterprise Tokenを70〜100台のMacに配布したい」——そんな要件が出てきた。

Chrome Enterprise(CBCM)にブラウザを登録するには、各Macの所定のパスにEnrollment Tokenを置く必要がある。JamfがあればConfiguration Profileで一発配布できるのだが、Jamfなし環境では話が変わる。

ちょうど2026年4月14日にApple Businessという新しいサービスがリリースされ、MDM相当の機能(macOSパッケージ配布など)が無料で使えるようになった。これを使えばいけるんじゃないか——というのが今回の検証の出発点だ。

結論から言うと、pkgの署名という壁に当たって完全な自動配布には至らなかった。ただ、途中まではかなりいいところまで来た。同じことを試みようとしている人の参考になれば、と思って実録をそのまま書く。

▼そもそもChrome Enterprise Tokenで何ができるか

Enrollment Tokenを各Macに配布してCBCM(Chrome Browser Cloud Management)に登録すると、Google AdminからChromeブラウザを一元管理できるようになる。セキュリティ強化目的で言うと、主にこんなことができる。

カテゴリ できること
アカウント制限 社内ドメイン以外のGoogleアカウントでのChromeログインを禁止
拡張機能管理 危険な拡張機能のブロック・強制インストール・ホワイトリスト運用
シークレットモード禁止 ポリシーをバイパスされるのを防ぐため必須
可視化 全端末のChromeバージョン・インストール済み拡張機能の棚卸し
SafeBrowsing強制 フィッシングサイトへのアクセスをブロック
💡 MDMとの違い
CBCMはあくまで「Chromeブラウザ」への管理で、OSやデバイス全体は管理しない。逆にBYOD(個人PC)にChromeだけ入れてポリシーをかける、という使い方が得意。

▼Tokenの配布方法を検討する

Macに対してTokenを配布するには、このパスにファイルを置く必要がある。

/Library/Google/Chrome/CloudManagementEnrollmentToken

ファイルの中身はTokenの文字列(UUIDの形式)だけでいい。

Jamfがあれば Configuration Profile か スクリプト配布で一発だが、今回の前提はJamfなし。70〜100台に手動実行させるのは現実的じゃない。ここで出てきたのが「Apple Businessのmacosパッケージ機能が使えるんじゃないか」というアイデアだ。

▼Apple Businessのmacosパッケージ機能とは

2026年4月14日にリリースされたApple Businessは、これまでのApple Business Manager(ABM)にMDM相当の機能が統合された無料サービスだ。目玉機能のひとつがmacOSパッケージ(pkg)の配布で、URL+SHA-256を指定するだけで管理対象のMacにpkgを配布できる。

pkgにはpostinstallスクリプトを仕込めるので、「Tokenを所定のパスに書き込む」という処理をpkgに乗せて配布できるはず——というのが検証の仮説だ。

▼検証の流れ

STEP 1

テスト用pkgを作る

まずファイルを作るだけのシンプルなpostinstallスクリプトでpkgを作り、「Apple Business経由でpkgが実行されるか」だけを確認することにした。

mkdir -p ~/abm_test/scripts cat << 'EOF' > ~/abm_test/scripts/postinstall #!/bin/bash touch /tmp/abm_test_success echo “hello from ABM” > /tmp/abm_test_success exit 0 EOF chmod +x ~/abm_test/scripts/postinstall pkgbuild \ –nopayload \ –scripts ~/abm_test/scripts \ –identifier com.example.abmtest \ –version 1.0 \ ~/abm_test_1.0.pkg
STEP 2

pkgをGitHub Releasesに公開する

Apple BusinessはURL指定でpkgを登録する仕組みのため、pkgを公開URLに置く必要がある。今回はGitHub Releasesを使った。

リポジトリを作成してReleaseとしてpkgをアップロードすると、こんな形式のURLが取れる。

https://github.com/your-org/abm-pkg-test/releases/download/v1.0/abm_test_1.0.pkg

URLが正しく機能しているかはcurlで確認できる。302(リダイレクト)が返れば問題なし。

curl -I “https://github.com/your-org/abm-pkg-test/releases/download/v1.0/abm_test_1.0.pkg”
STEP 3

SHA-256を取得してApple Businessに登録する

shasum -a 256 ~/abm_test_1.0.pkg

Apple Business → macOSパッケージ → + で以下を入力して登録する。

項目
URLGitHub ReleasesのURL
SHA-256shasum で取得した値
バンドルIDcom.example.abmtest
バージョン1.0
STEP 4

ブループリントに紐付けて対象Macに配布する

登録したpkgをブループリントに紐付け、対象ユーザー・デバイスに割り当てる。Apple Businessの管理画面でブループリントの「アプリ」タブにpkgを追加し、「ユーザ」タブとデバイスタブで対象を指定する。

▼一瞬「インストール中」になったが……

配布設定が完了して待っていると、Apple Businessの管理画面で「インストールを保留中:1」という表示が出た。端末側で処理が走っている。

しかし対象Macのターミナルで確認すると、ファイルが作られていない。

cat /tmp/abm_test_success # → No such file or directory

「一瞬インストール中になったのに動いていない」——ここで詰まった。

▼原因の切り分け:署名なしpkgが壁だった

pkgの署名状態を確認してみると、こう出た。

pkgutil –check-signature ~/abm_test_1.0.pkg # → Status: no signature
⚠️ 署名なしpkgはApple Business経由では実行されない(可能性が高い)
Apple Developer Program(年99ドル)で発行したDeveloper ID Installer証明書で署名されていないpkgは、MDM経由の配布でもブロックされる場合がある。「インストールを保留中」のまま進まなかった原因はここにある可能性が高い。

念のため、手動でスクリプトを実行すると正常に動くことは確認できた。

sudo bash << 'EOF' TOKEN="your-enrollment-token" DIR="/Library/Google/Chrome" mkdir -p "$DIR" echo -n "$TOKEN" > “$DIR/CloudManagementEnrollmentToken” chmod 644 “$DIR/CloudManagementEnrollmentToken” EOF cat /Library/Google/Chrome/CloudManagementEnrollmentToken # → your-enrollment-token ← 正しく書き込まれた

ChromeをCommand+Qで完全終了してから再起動し、アドレスバーで chrome://policy を確認すると、CloudManagementEnrollmentTokenが反映されていることも確認できた。Google AdminのManaged browsersにも端末が出てきて、手動での登録自体は完全に成功した。

手動実行では完全に動いた
スクリプトの内容は正しく、Tokenもパスに書き込まれ、CBCMへの登録も完了した。Apple Business経由の自動配布だけが、署名の問題で止まっている状態。

▼現時点での結論

方法 結果
手動でスクリプト実行 ✅ 動く
Apple Business経由でpkg配布(署名なし) ❌ 保留中のまま進まない
Apple Business経由でpkg配布(署名あり) ❓ 未検証(Apple Developer Program登録が必要)
Jamfでスクリプト配布 ✅ 確実に動く(Jamfがある場合の王道)

▼次の検証ポイント

完全な自動配布を実現するには、以下のどれかを試す必要がある。

  • Apple Developer Programに登録して署名ありpkgを作る(年99ドル・Developer ID Installer証明書を使用)
  • 対象台数が少ない場合は、Slackでコマンドを案内して手動実行してもらう(1回きりの作業なので意外と現実的)
  • 70〜100台規模ならJamfを導入してスクリプト配布する(署名周りをJamfが吸収してくれる)

▼まとめ

  • Chrome Enterprise Tokenの配布自体はシェルスクリプト1本で完結する
  • Apple BusinessのmacOSパッケージ機能は「URL+SHA-256でpkgを登録→ブループリントで配布」という流れ自体は動く
  • ただし署名なしpkgはMDM経由での実行がブロックされる可能性が高く、自動配布は現時点では詰まっている
  • 同じことを試みる場合はApple Developer Programへの登録(pkgの署名)が必要になりそう

「Jamfなし環境でApple BusinessからChrome Enterprise Tokenを配布できるか」——結論はまだ出ていない。署名ありpkgで再挑戦したときにまた続きを書く。

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