SaaSライセンス管理を整えていなかった結果、2社で同じ失敗をした話【情シスが解説】
この記事でわかること
  • ライセンス管理を放置するとどうなるか(実体験)
  • 台帳に持つべき項目と管理の考え方
  • 追加・更新の共通フロー(見積→法務→稟議→捺印)
  • サービスごとの購入方法の違い
  • 更新漏れを防ぐカレンダー運用術

情シス担当になって最初にやるべきことのひとつが、SaaSのライセンス管理だ。でも「とりあえず使えてるからいいか」と後回しにしがちで、気づいたときには取り返しのつかない状況になっていることが多い。

この記事では、実際に複数社でライセンス管理を整えてきた経験をもとに、台帳の作り方から更新フロー・購入手順まで一通り解説する。

▼ライセンス管理を放置すると何が起きるか

まず実体験を2つ紹介する。どちらも「あるある」で済まされがちだが、実際に経験すると結構しんどい。

① 余計なコストが4〜5ヶ月分発生していた

ある会社で情シスを引き継いだとき、使われていないSaaSのライセンスが複数放置されていた。退職者のライセンスがそのままになっていたり、使用を止めたツールの契約が継続していたりと、原因はさまざまだった。

発覚したのは棚卸しをしたタイミングで、既に4〜5ヶ月分の無駄なコストが出ていた。月数万円のサービスが複数重なると、トータルでは相当な額になる。

② 代理店経由のライセンス更新日を把握しておらず、業務スケジュールが崩れた

代理店から購入しているライセンスは、更新日の管理が特にずさんになりやすい。直接契約のSaaSと違って「請求が来る→払う」という流れで何となく回ってしまうからだ。

ある会社では、更新日を把握していなかった代理店経由のライセンスが突然更新のタイミングを迎え、見積→法務→稟議→捺印という対応フローを急遽こなす羽目になった。予期していない業務が割り込んできて、その月のスケジュールがかなり崩れた。

⚠️ 「誰も言い出せない構造」に注意
ライセンスの無駄が発生しやすい背景には、組織的な問題がある。経理・財務は「継続して払っているものは必要なもの」と思い込んでいて、変に「これいらなくないですか?」と言い出しにくい。一方でサービスを使っている部門は「解約は情シス側がやってくれる」という思い込みがある。結果、誰も何もしないまま無駄なコストが積み上がっていく。これが少なくとも2社で経験した構造的な問題だった。

▼まず台帳を作る

ライセンス管理の出発点は台帳だ。どのSaaSを契約していて、誰が管理していて、いつ更新があるのかを一元管理する。スプレッドシートで十分で、以下の項目を持っておくと管理しやすい。

項目内容・メモ
サービス名Slack、Google Workspace、Zoom など
プランBusiness / Enterprise / Pro など
ライセンス数現在の契約数。定期的に実使用数と照合する
購入先ベンダー直販 or 代理店。代理店の場合は会社名も
担当者・連絡先ベンダー・代理店側の窓口情報
連絡方法メール / Slack / Webフォームなど
契約期間年契約 or 月契約。年契約は途中解約できないケースが多いので注意
支払頻度月払い or 年払い。年契約でも月払いのサービスがある
更新日年払いは特に重要。カレンダーにも登録する
更新前対応期間更新の何ヶ月前から動き始めるか
自動更新の有無自動更新のものは減数・解約の申請期限に注意

以下はサンプルの台帳イメージだ。実際にはスプレッドシートで管理するとよい。

サービス名 プラン ライセンス数 購入先 連絡方法 契約期間 支払頻度 更新日 更新前対応期間 自動更新
Google Workspace Business Starter 45 代理店A メール 月契約 月払い 4月1日 2ヶ月前 あり
Slack Pro 45 Slack直販 Webフォーム 年契約 年払い 6月1日 1ヶ月前 あり
Zoom Business 10 Zoom直販 Webフォーム 年契約 月払い あり
Jamf Pro macOS向け 30 代理店B Slackコネクト 年契約 年払い 8月1日 2ヶ月前 なし
Notion Plus 20 Notion直販 Webフォーム 年契約 年払い 10月1日 1ヶ月前 あり
HENNGE One Standard 45 代理店A メール 年契約 年払い 12月1日 2ヶ月前 なし
💡 台帳は「作って終わり」ではなく入社・退職・組織変更のたびに更新する運用フローとセットで整備することが重要だ。台帳があっても最新状態でなければ意味がない。

▼追加・更新の共通フロー

ライセンスの追加・更新は、サービスごとに手順が異なる部分もあるが、基本的には以下のフローで進む。社内の稟議フローに合わせて調整してほしい。

1
必要数の確認 目安:1〜2営業日
台帳と実使用状況を照合して、追加・削減が必要な数を確認する。稟議で「なぜこの数が必要か」を説明できるようにしておく。
2
見積書の取得 目安:1〜2営業日
ベンダーまたは代理店に必要数・プランを伝えて見積書を依頼する。金額は税込で確認しておくこと。ベンダーによっては税抜でしか出してこない場合がある。
3
法務チェック 目安:当日〜5営業日
契約内容に変更が伴う場合は法務チェックが必要になることがある。ただし小規模な会社では法務担当がいないケースも多く、「更新のみ・内容変更なし」であればそもそも不要なことも多い。会社のフローに従って判断すること。
4
稟議申請 目安:当日〜5営業日
社内の稟議フローで承認を取る。30〜50名規模の会社であればSlackで上長に一声かけてその日に承認、というケースも多い。一方で上場準備中・大手寄りの会社はKickflowやコンカーなどの稟議ツールで数日かかることもある。いずれにしても申請時は①目的・理由、②税込金額、の2点を明記しておくと話が早い。
5
捺印・契約手続き 目安:1〜3営業日
電子署名(DocuSign・CloudSignなど)の場合は送付先を間違えないよう注意。
6
ベンダーへの発注連絡
捺印申請が進んだらベンダー側にもリマインドの連絡を入れておくと、手続きがスムーズに進む。

ステップ1〜6の合計で、小規模な会社であれば1週間以内で完結することもある。ただし法務・稟議が正式フロー化している会社では2〜3週間かかるケースもある。自社のフローがどちらかを把握した上で、更新日から逆算して動き始めるタイミングを決めておくといい。

▼サービスごとの購入方法の違い

SaaSのライセンス購入方法は大きく3パターンに分かれる。どのパターンかによって動き方が変わるため、台帳に連絡方法も記載しておくと便利だ。

パターン特徴代表的なサービス例
Webフォーム 管理画面から直接購入・追加できる。手続きが最も早い。自動更新が多い。 Slack、Notion、Zoomなど直販SaaS全般
メール 代理店や一部ベンダーはメールで見積依頼・発注をする形式。やり取りの記録が残りやすい。 代理店経由のMicrosoft・Google Workspace系など
Slack等 Slackコネクトで繋がっているベンダーはSlack上でやり取りする形式。スピードは速いが記録が流れやすいので注意。 スタートアップ系SaaSに多い
⚠️ 代理店経由のライセンスは特に注意
代理店経由の場合、自動更新であっても更新のタイミングで稟議・捺印が必要になるケースがある。「自動更新だから何もしなくていい」と思っていたら更新対応のフローが発生していた、ということになりやすい。購入先が代理店のサービスは特に更新フローを事前に確認しておくこと。

▼更新漏れを防ぐカレンダー運用術

台帳を作ったら、更新日をそのまま放置しないこと。年払いのライセンスは特に、更新日の2〜3ヶ月前にカレンダーにリマインダーを設定しておくのが基本だ。

理由は前述のフローの通りで、見積→法務→稟議→捺印で最短2〜3週間かかるため、1ヶ月前では間に合わないケースがある。余裕を持って2ヶ月前から動き始めるのが現実的だ。

カレンダー運用のおすすめ設定
  • ▶ 更新日の2〜3ヶ月前:「〇〇ライセンス更新準備開始」のリマインダー
  • ▶ 更新日の1ヶ月前:「〇〇ライセンス更新・稟議完了期限」のリマインダー
  • ▶ 更新日当日:「〇〇ライセンス更新日」を記録として残す

また、毎月1回ライセンス台帳を見直すルーチンを作っておくと、使われていないライセンスの発見や、ライセンス数と実使用数のズレを早期に検知できる。

▼まとめ

SaaSライセンス管理は地味だが、放置すると無駄なコストと突発的な業務負荷という2つの問題を引き起こす。特に代理店経由のライセンスは更新フローが複雑になりやすいため、早めの準備が必須だ。

まず台帳を作り、更新日をカレンダーに登録し、フローを整備する。この3つを最初にやっておくだけで、あとから「気づいたら更新日になってた」という事態はほぼ防げる。

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