情シスがGoogle I/O ’26を全部見て、支援先の会社で使えそうなものだけ抜き出した話

📘 この記事でわかること

  • Google I/O ’26で発表された主要6トピックの概要
  • Gemini 3.5 Flash / Omni / Spark / Antigravity、情シスにとって何が変わるのか
  • 50〜300名規模の会社で「実際に使えそう」なシナリオ
  • 「すぐ導入」ではなく「今のうちに知っておく」べき理由

2026年5月20日、Google I/O ’26が開催された。

Gemini 3.5、動画生成のOmni、パーソナルAIエージェントのSpark、開発プラットフォームのAntigravity——発表のボリュームがすごい。テック系メディアの速報は山ほど出ているが、「で、うちの会社で何が変わるの?」という視点の記事はほとんどない。

自分は50〜300名規模のスタートアップ・中小企業を中心に情シス代行を掛け持ちしている立場だ。エンタープライズ向けの華やかなデモを見ても、正直「うちには関係ないな」で終わることのほうが多い。

ただ、今回のI/Oはちょっと毛色が違った。「情シス一人でやってる会社」の実務を変えうるピースが、いくつか見えた。

この記事では、Google I/O ’26の主要発表を情シス実務の目線で噛み砕き、「うちの支援先だったらこう使えるかも」というシナリオを添えて整理する。

▼ まず全体像:Google I/O ’26の主要発表6つ

今回の発表は、Google Cloud CEO Thomas Kurian名義のブログで一本にまとまっている。キーワードは「Agentic Enterprise」——AIエージェントが企業の実務を動かす時代、という旗印だ。

情シスに関係するものを中心に、6つの発表を整理した。

発表 概要 情シス的な注目ポイント
Gemini 3.5 Flash フラグシップ級の性能をFlashの速度・コストで実現。エージェント・コーディング特化 API経由で業務自動化の精度が上がる。3.5 Proは来月公開予定
Gemini Omni テキスト/音声/画像/動画→動画生成。自然言語で動画を編集できる 社内研修動画やマニュアル動画の制作コストに影響しうる
Google Antigravity エージェント開発プラットフォーム。デスクトップアプリ+CLI ノーコード〜ローコードで社内エージェントを作る基盤。Google Cloudのセキュリティを継承
Gemini Spark 24/7で動くパーソナルAIエージェント。Workspace+外部ツール横断 ServiceNow / Jira / Salesforce連携。情シスのインシデント対応自動化の可能性
Workspace新機能 Google Pics(AI画像編集)、Gmail / Docs / Keepの音声操作 総務兼任情シスにとって、マニュアル画像・社内資料の作成効率に直結
CodeMender AIコードセキュリティエージェント。脆弱性を自動検出→修正→テスト→パッチ適用 開発チームがいる会社のセキュリティ施策として要注目

以下、情シスの実務で特にインパクトが大きいと感じたものから順に深掘りする。

▼ Gemini Spark——「情シスの右腕」になりうるパーソナルエージェント

今回の発表で、個人的に一番「これは来る」と感じたのがGemini Sparkだ。

ざっくり言うと、Workspace・外部コネクタ・ウェブを横断して、バックグラウンドで勝手に仕事をしてくれるAIエージェント。しかも24時間動く。

何ができるのか

  • 定期タスクの委任:繰り返しタスクを設定し、エージェントが自動で実行する
  • 承認制御:メール送信など高リスク操作は人間の承認が必要
  • 外部ツール連携:ServiceNow、Jira、Salesforce、SharePointなどのコネクタが使える
  • パーソナライズ:使うほど文体・好みを学習して精度が上がる

セキュリティ面では、タスクごとにエフェメラルVM(使い捨ての仮想環境)で実行され、DLPポリシーも適用される。認証情報は暗号化されてエージェントには直接渡されない設計だ。

💡 情シス実務シナリオ:インシデント対応の半自動化

ある会社で、社員からの「VPNが繋がらない」「SaaSにログインできない」系の問い合わせがSlackで月50件来ている。今は情シス担当が手動でServiceNowにチケットを切り、対応優先度を判断し、解決後にステータスを更新している。

Sparkが使えるようになると、こういう流れが見えてくる:

  • Slackの問い合わせをSparkが検知→ServiceNowにチケット自動起票
  • 過去の類似チケットから対応手順をDocs上にドラフト
  • 対応完了後、週次でインシデントレポートをSheetsに自動集計
  • 重大インシデントが発生したらChatで情シス担当にアラート+ステークホルダー向けメールのドラフト作成(送信は承認制)

ポイントは「全自動」ではなく「ドラフト作成+承認」というステップが挟まること。ここが情シスのような権限管理が重要な職種との相性がいい。

⚡ 現時点の注意:Gemini Spark in Gemini Enterpriseは「rolling out soon」、Workspace版は「preview for business customers soon」のステータス。今すぐ使えるわけではない。ただ、ServiceNowやJiraを使っている会社なら、「コネクタが使えるようになったらすぐ検証できる」状態にしておく価値はある。

▼ Google Antigravity——「情シスがエージェントを作る側」になれるプラットフォーム

Antigravityは、AIエージェントを開発・管理するためのプラットフォームだ。デスクトップアプリ(Antigravity 2.0)とCLIが新たにリリースされた。

「開発プラットフォーム」と聞くとエンジニア向けに見えるが、Googleが強調しているのは「Make everyone a builder」——組織の全員がビルダーになれるという方向性だ。

情シスにとっての意味

今、情シスが自動化しようとするとき、選択肢はだいたい以下のどれかだ。

  • GAS(Google Apps Script)でゴリゴリ書く
  • Zapier / Make あたりのiPaaSを使う
  • 外部のRPA系ツールを入れる

Antigravityは、ここに「自然言語でエージェントを組み立てる」という選択肢を加える。しかもGoogle Cloudのセキュリティポリシーをそのまま継承するため、エンタープライズ利用時のデータ境界問題をクリアしやすい。

💡 情シス実務シナリオ:SaaSアカウント棚卸しの自動化

四半期ごとにやってくるSaaSアカウントの棚卸し。SmartHRの在籍者リストとGoogle Workspace / Slack / Zoom / 1Passwordのアカウントリストを突き合わせて、退職者のアカウントが残っていないか確認する。

今はスプレッドシートにエクスポート→VLOOKUPで突き合わせ→差分を目視確認、という流れでやっている会社が多い。

Antigravityで「各SaaSのAPIからアカウント一覧を取得→SmartHRの在籍者と照合→差分リストをSheetsに出力→不一致があればSlackに通知」というエージェントを作れるようになれば、四半期ごとの棚卸しがボタン一つになる。

⚠️ 注意:「自然言語でエージェントを作れる」=「誰でもすぐ作れる」ではない。APIの認証設計やデータの受け渡しの理解は必要だ。だが、今までGASを書ける情シスにしかできなかった自動化が、もう少し広い層に開放される可能性がある。

▼ Gemini 3.5 Flash——「速くて安い」が情シスのAI活用を後押しする

Gemini 3.5 Flashは、フラグシップモデル(3.1 Pro)を複数のベンチマークで上回る性能を、Flashの速度・コストで実現したモデルだ。同等モデルの半分以下のコストで使えるとされている。

なぜ情シスに関係するのか

「モデルの性能が上がった」と言われても、情シスの日常業務では直接ピンとこないかもしれない。

ただ、ここ最近の流れとして、情シスがAI APIを業務自動化に組み込むケースが増えている。たとえばOAuthの申請管理、ヘルプデスクの一次回答、ログの異常検知。こういった用途では、モデルの精度とコストのバランスが非常に重要になる。

💡 情シス実務シナリオ:ヘルプデスク一次回答の精度向上

ある会社で、Slackの #it-helpdesk チャンネルに投稿された質問に対して、AIが社内FAQを検索して一次回答をドラフトする仕組みを運用している。

今使っているモデルだと、「VPNの設定方法を教えて」のような明確な質問には答えられるが、「昨日まで使えてたけど今日だけ繋がらない」のような文脈依存の質問には的外れな回答をしがちだった。

3.5 Flashの「長期的なエージェントタスクに強い」という特性が本当なら、過去のチケット履歴と照合して「直近でVPN基盤の障害が出ていないか」「該当ユーザーの端末情報は何か」を踏まえた一次回答ができる可能性がある。しかも従来より安い。

▼ Workspace新機能——Google PicsとVoice、地味だけど効く

派手さではSparkやAntigravityに負けるが、実務でいちばん早く恩恵を受けるのはWorkspaceの新機能かもしれない。

Google Pics

Drive / Docs / Slides内で使えるAI画像生成・編集ツール。ポイントは「生成」だけでなく「編集」ができること。画像内のオブジェクトを個別に移動・リサイズしたり、テキストを独立して修正・翻訳したりできる。

💡 情シス実務シナリオ:社内マニュアルの画像更新

情シスが作る社内マニュアル(VPN接続手順、PC初期設定ガイドなど)にはスクリーンショットが大量に含まれる。UIが変わるたびにスクショを撮り直し→トリミング→注釈を入れる、という作業が地味に重い。

Picsの「オブジェクト単位の編集」が使えるようになれば、既存のスクショ画像に対して「このボタンの位置を移動」「このテキストを英語→日本語に変換」といった修正がDocs上で直接できるようになる。スクショの撮り直しが減るだけで、マニュアル更新の工数は体感で半分以下になる。

Voice機能(Gmail / Docs / Keep)

Gmail・Docs・Keepに音声操作が追加される。「受信トレイからプロジェクトの期日を探して」「週報のドラフトを修正して」「メモを整理してリスト化して」といった指示をハンズフリーで実行できる。

✅ 総務兼任の情シスにとって:会議中に「さっきのメールの添付ファイル確認して」「議事録のToDoをKeepに転記して」ができるだけで、MTG後の後処理が相当ラクになる。この夏プレビュー提供予定。

▼ Gemini Omni——動画生成、情シスにも使い道はある

Gemini Omniは、テキスト・音声・画像・動画を入力にして動画コンテンツを生成できるモデルだ。自然言語で動画の編集もできる。

正直、「情シスに動画生成?」という感覚はある。ただ、一つだけ具体的に見えるユースケースがある。

💡 情シス実務シナリオ:セキュリティ研修の動画化

自分が支援先向けに作っているセキュリティ研修スライドは、いまGoogleスライドで配布している。だが、「スライドだけだと読まない」「動画のほうが頭に入る」という声は前からあった。

Omniが使えるようになれば、既存のスライド+説明テキストを入力して、ナレーション付きの研修動画を自動生成できる可能性がある。従業員50名の会社で、外部に動画制作を発注する予算はない。だが「スライドを食わせたら動画が出てくる」なら、十分実用的だ。

▼ CodeMender——開発チームがある会社の情シスは知っておくべき

CodeMenderは、AIがコードの脆弱性を自動検出→修正提案→テスト→パッチ適用まで行うセキュリティエージェントだ。Agent Platformに統合される。

情シスが直接コードを書かない会社でも、開発チームとの連携でセキュリティ施策を推進する立場にいるなら、知っておく価値がある。

💡 情シス実務シナリオ:セキュリティ施策の自動化レイヤー

ある会社で、四半期ごとにセキュリティレビューを実施している。開発チームにコードの脆弱性スキャンを依頼し、結果をスプレッドシートにまとめ、対応優先度を付けて追跡する——という運用を情シスが主導している。

CodeMenderが実用段階になれば、「スキャン→検出→修正提案」の部分を自動化し、情シスは「どの修正を承認するか」の判断にリソースを集中できる。開発チームの工数も減る。

加えて、同時に発表されたAI Content Detection APIも注目だ。AI生成コンテンツを識別するAPIで、社内で生成AIの利用が広がるなかで「この文書はAIが書いたものか」を判定する用途に使える。コンプライアンス・監査対応を意識している会社にとっては、今後のツール選定リストに入れておくべきものだ。

▼ まとめ:「すぐ導入」ではなく「次の検証リスト」に入れておく

正直に言うと、今回の発表で「来週から使える」ものはほとんどない。Gemini 3.5 Flashは今日からAPIで使えるが、SparkもAntigravityもWorkspace新機能も、まだ「rolling out soon」か「preview this summer」の段階だ。

だが、情シスの仕事は「出てから慌てて検証する」では遅い。「こういうものが来る」と知っておくこと自体が、半年後の意思決定を速くする。

今回の発表を踏まえて、自分なりの「次の検証リスト」を整理するとこうなる。

発表 提供時期 情シスの次のアクション
Gemini 3.5 Flash 提供中 既存のAI自動化フローがあるなら、モデル差し替えで精度・コスト比較する価値あり
Gemini Spark 近日公開 ServiceNow / Jiraを使っている会社は、コネクタの仕様を先に確認しておく
Antigravity 提供中(Enterprise版は近日) まずデスクトップアプリを触ってみる。GASの代替になりうるかを評価
Google Pics 2026年夏プレビュー 社内マニュアルの画像更新フローを棚卸ししておく
Gemini Omni 数週間以内にAPI公開 研修動画のニーズがある会社なら、スライド→動画変換を試す候補に
CodeMender テスト中(拡大予定) 開発チームのセキュリティレビューフローを整理しておく

⚡ 一番大事なこと:Google I/Oの発表を追うこと自体が目的ではない。自分の会社、あるいは支援先の会社で「いま手作業で回している業務」のうち、どれがAIエージェントに任せられるようになるか——そのリストを頭の中で更新し続けることが、情シスの仕事の本質だ。

📅 30分無料相談、受け付けています

「AI系の新機能が出すぎて、自社で何を検証すべきか整理できない」「Google Workspaceの新機能、うちの運用にどう影響するか知りたい」——そういった段階からお気軽にどうぞ。

📅 30分無料相談を予約する →