業務委託の情シスが、自分の Claude を使わずに稟議を出した理由

業務委託として、ある会社の情シスを支援している。仕事の中で、AI(Claude Code)でデータを集計したり、自動化のスクリプトを書いたりしたい場面が増えてきた。

手元には自分の Claude のアカウントがある。だが、支援先の情報を、自分の個人アカウントで扱うわけにはいかない。そこで、その会社の Claude と GitHub のアカウントを1つ追加してもらう稟議を出すことにした。その会社はグループ企業で、AI の利用には社内の審査がある。この記事では、稟議の材料として何を整理したかを書く。承認の結果はまだ出ていない。

この記事でわかること

  • ▶ 外部の作業者が、個人の AI アカウントで支援先の仕事をしない理由
  • ▶ 稟議で決裁者が知りたいこと:用途・扱うデータ・扱わないデータ・ルール
  • ▶ GitHub もセットで申請した理由
  • ▶ 稟議に入れた「確認してほしいこと」

▼なぜ個人のアカウントではだめなのか

理由は3つある。

  • ▶ 会社の管理の外になる:会社の AI の設定(データの扱い、利用のルール)が効かない。何を入力したかを会社が確認できない
  • ▶ 作ったものが会社に残らない:個人のアカウントで作ったスクリプトや手順は、契約が終わると一緒に消える
  • ▶ グループの AI 利用ルールに沿わない:AI の利用に審査がある会社では、承認されていない使い方になる

自分の手間は少し増える。だが、情シスとして「作った人が持ち主になる」状態を避けるよう勧めている立場で、自分がそれをやるわけにはいかない。

▼稟議の材料として整理したこと

概要:新しい契約ではなく、既存の契約へのアカウント追加

まず、決裁者が最初に気にする「新しいサービスの契約なのか」に答えた。この会社では、Claude はすでに組織で導入されていて、MDM で設定も配られている。GitHub も開発部門で使っている。今回は既存の会社の契約にアカウントを1つ追加するだけで、新しいサービスの審査ではない。費用は1アカウント分、期間は委託契約の間で、終了時に返却する。

目的:同じ稼働の中で、改善に回せる時間を増やす

目的は「楽をしたい」ではなく、集計・スクリプト・手順書の作成を速くして、同じ稼働の中で改善提案や仕組み化に回せる時間を増やすこと、と書いた。あわせて、作ったスクリプトを会社の GitHub に残し、担当者が替わっても引き継げる状態にすることも目的に入れた。

用途:今の案件での使い方を具体的に

用途 具体例
MDM のデータの集計 インストール済みアプリの棚卸し、資産台帳と端末の突き合わせ、停止した端末の洗い出し
自動化のスクリプト 月次レポートの Google Apps Script、管理者権限の申請・承認フロー、MDM のコマンド
セキュリティ点検・調査 Google Workspace の設定の点検、外部のセキュリティ評価で指摘された事項の調査
ドキュメント 手順書・マニュアル、定例の資料と議事録

「なぜ Claude Code なのか」も1行添えた。API の出力や CSV を手元で直接扱えるので、集計やスクリプト作成に向いている。社内ですでに導入・設定配布されているので、管理方法も社内の標準にそろう。

扱うデータ・扱わないデータ:ここがいちばん大事

区分 内容
扱う 端末・設定の情報(OS のバージョン、アプリ名と台数、ポリシーの設定値など)、公開情報(製品の仕様・公式ドキュメント)、手順書の文案
扱わない 個人の勤怠に関わるデータ(PC のログイン・ログオフの記録)、人事の情報、パスワード・API キー・トークン、個人情報

決裁者がいちばん知りたいのは「何を入力されるのか」だ。扱うものより、扱わないものを具体的に書くほうが安心してもらえる。たとえば PC の利用状況レポートでは、Claude はコードを書く部分にだけ使い、勤怠に関わるデータそのものは入力しない。データは Google Workspace の中で処理する。この線引きを用途ごとに書いた。

運用のルール(案)

  • ▶ Claude は社内の設定とグループのガイドラインに従う。AI の利用申請が必要なら、その手続きに従う
  • ▶ API キーなどの秘密情報は GitHub に置かない(Secrets やスクリプトのプロパティを使う)
  • ▶ リポジトリは非公開で、閲覧は社内の関係者に限る
  • ▶ 契約が終わったらアカウントは返却し、リポジトリは会社に残す

▼GitHub もセットで申請した理由

AI でスクリプトを書くのは速い。だが、作ったものが外部の作業者の手元にしかなければ、引き継げない。AI で作るコストは下がったが、保守のコストは下がっていない。だから、スクリプトの置き場所と変更履歴(誰が・いつ・何を変えたか)を会社の GitHub に置く。社内の担当者が中身を確認でき、担当が替わってもそのまま引き継げる。

AI のアカウントだけを申請すると「便利な道具をください」に見える。GitHub をセットにすると「作ったものを会社の資産にする仕組み」として説明できる。

▼稟議に入れた「確認してほしいこと」

わからないことは、推測で埋めずに確認事項として並べた。

  • ▶ グループの AI 利用の審査の対象になるか。なるなら、その手続き
  • ▶ Claude:前任の担当者のアカウントを引き継ぐか、追加で買うか。席の種類(Claude Code が使えるもの)と月額
  • ▶ GitHub:既存の組織のプランと1アカウント分の月額。リポジトリを置く場所
  • ▶ アカウントの発行の担当者

決裁者が「何を決めればいいか」がはっきりしていると、稟議は進みやすい。結果が出たら、この記事に追記する。

▼まとめ

  • ▶ 支援先の情報は、個人の AI アカウントで扱わない。会社の管理下のアカウントで
  • ▶ 「新しい契約か、既存の契約への追加か」を最初に書く
  • ▶ 扱うデータより、扱わないデータを具体的に書く
  • ▶ AI と GitHub をセットにして、作ったものを会社に残す
  • ▶ わからないことは確認事項として並べ、決裁者が決めることをはっきりさせる
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