Windows LAPS はアカウントを作らない。割り当て済みでも回す相手がいなかった

新入社員の PC の仕上げで、利用者を PC の管理者から外した。外したあとに管理者の一覧をもう一度見たら、手順書に「このアカウントでサインインして作業する」と書いてある、LAPS 用のローカル管理者がいなかった。

Intune には Windows LAPS(PC ごとのローカル管理者のパスワードを自動で定期的に変え、Entra ID に保管する仕組み)のポリシーがあり、この PC にも割り当てられていた。それでも、パスワードを回す相手のアカウントが PC になかった。Windows LAPS は、指定した名前のアカウントのパスワードを回すだけで、アカウントは作らない(自動アカウント管理をオンにしない限り)。ポリシーが割り当て済みでも、それだけではパスワードが回っている証拠にならない。

ある会社(30名規模)で、気づいてからアカウントを作り、LAPS が動いたことをイベントログで確かめるまでを書く。アカウントがなかった原因は、自分が手順書を書き直したときの書き写し漏れだった。

この記事でわかること

  • ▶ Windows LAPS が「有効なのに何もしない」状態になる理由
  • ▶ LAPS 用の管理者を作り、Entra への保存とパスワードの更新をイベントログで確かめる方法
  • ▶ 利用者を管理者から外す前に、何があることを確かめるか
  • ▶ 次の手としての自動アカウント管理(Windows 11 24H2 以降)と、切り替える前に確かめること

▼きっかけ:利用者を管理者から外したら、ローカルの管理者が残らなかった

この会社では、新しい PC の初期設定を利用者のアカウントで進めて Entra ID に参加させる。Entra 参加の操作をしたユーザーは、その PC の管理者(ローカルの Administrators)に入る。だから仕上げで、利用者を標準ユーザーに戻す。

今回は PowerShell で、利用者を Administrators から外した。外したあと、もう一度一覧を出した。残っていたのは次の3つだけだった。

残っていたもの 中身
Entra の役割(2つ) グローバル管理者と「Microsoft Entra 参加済みデバイスのローカル管理者」。Entra 参加のときに自動で入る。人ではなく役割として並ぶ
組み込みの Administrator 無効で、パスワードも設定されていない

手順書が「LAPS の管理者でサインインして、利用者を標準ユーザーに戻す」と書いている、そのアカウントがない。手順書どおりに進めていたら、最初の一歩(そのアカウントでサインイン)で止まっていたはずだ。今回は PowerShell で外したので、外したあとに気づいた。

気づけたのは LAPS を調べていたからではない。外したあとに、もう一度一覧を見たからだ。

▼原因:Windows LAPS は「既にあるアカウント」を回すだけで、作らない

ポリシーの中身

Intune の Windows LAPS のポリシーを開いて読んだ。

設定 この会社の値 意味
パスワードの保存先 Entra ID Intune/Entra の管理画面の「ローカル管理者パスワード」から見る
更新の間隔 30日 30日ごとにパスワードが変わる
管理するアカウント 名前を指定したローカルの管理者(この記事では lapsadmin と呼ぶ) その名前のアカウントが PC にあれば、そのパスワードを回す
自動アカウント管理 オフ アカウントは作らない

Microsoft のドキュメント(Intune の LAPS ポリシーの説明)にもはっきり書いてある。自動アカウント管理がオフ(既定)なら、管理するアカウントは管理者が先に作っておく。Intune の LAPS のポリシーは、新しいアカウントもパスワードも作らず、PC に既にあるアカウントを管理するだけだ。

作る前の状態は、見ていない

正直に書くと、アカウントを作る前に、この PC の LAPS のイベントログも、Intune でのポリシーの状態表示も見ていない。気づいた時点でそのまま作ったので、「作る前に LAPS が何をしていたか」の記録はない。

ただ、Microsoft の Intune の LAPS の FAQ には、こう書いてある。自動アカウント管理を使わない設定(または Windows 11 23H2 以前)で、PC にない名前を指定しても「効果はなく、エラーも出ない」。指定した名前のアカウントがなければ、管理されるアカウントは「なし」になる。

つまり、ポリシーの割り当ては問題なく済み、エラーも出ないまま、パスワードは1回も回らない。管理画面の「割り当て済み」を見て安心していると、この状態には気づけない。

なぜアカウントがなかったか:手順書を書き写すとき「作る」手順が落ちた

前任のベンダーが残した手順書を読み直した。PC の初期設定の章に、LAPS 用の管理者を作る手順はあった。「PC の台帳を更新する」と同じ手順番号の中に、「ローカルアカウントを追加する。仮のパスワードで作っておけば、ポリシーが同期されたあと Entra でローテーションされる」という形で入っていた。

その手順書をもとに、自分が今の手順書を書き直したのは、この PC の初期設定と同じ日だ。そのとき「台帳を更新する」は写した。同じ手順の中の「アカウントを作る」は落とした。一方で、仕上げの「LAPS の管理者でサインインして戻す」は写していた。

LAPS 用の管理者について 前任の手順書 自分が書き直した手順書
作る あり(台帳の更新と同じ手順の中) なし(落ちた)
使う(サインインして作業する) あり あり
パスワードの回し方 冒頭は「自動ローテーションは運用していない」、本文は「30日に1回ローテーション」と食い違い Intune の LAPS(30日)を正とした

「使う」手順は、サインインの ID まで書いてあって目立つ。「作る」手順は、別の作業の中に1行で埋もれている。書き写すと、目立つほうが残り、埋もれたほうが落ちる。

前任の手順書の食い違いは、前に275ページの手順書を突き合わせた記事で、ずれの一覧として拾っていた。今回は、写した自分の側で新しいずれを作っていた。手順書に「このアカウントで」と書いてあったら、そのアカウントが手順書のどこで作られているかを探す。見つからなければ、それが抜けだ。

▼LAPS 用の管理者を作り、「Entra に保存」と「更新」をイベントログで確かめる

既存のポリシーは名前を指定したアカウントを管理する設定なので、その名前でアカウントを作った。管理者の PowerShell で1行ずつ打つ。

# 1. 仮のパスワード(ランダム。LAPS がすぐ上書きするので記録しない) $pw = ConvertTo-SecureString ([guid]::NewGuid().ToString() + ‘Aa1!’) -AsPlainText -Force # 2. ローカルのアカウントを作る(名前はポリシーで指定しているもの) New-LocalUser -Name lapsadmin -Password $pw -PasswordNeverExpires -Description ‘Windows LAPS で管理’ # 3. 管理者のグループに入れる(SID で指定すれば日本語の Windows でもそのまま動く) Add-LocalGroupMember -SID S-1-5-32-544 -Member lapsadmin # 4. 次の定期処理を待たずに LAPS を走らせる Invoke-LapsPolicyProcessing # 5. 結果を見る Get-WinEvent -LogName ‘Microsoft-Windows-LAPS/Operational’ -MaxEvents 8

仮のパスワードは、手で決めずにランダムに作り、どこにも記録しない。LAPS が動けばすぐに上書きされるので、覚えておく意味がない。手で決めた値を管理表に書くと、LAPS が上書きしたあとも「もう使えない古い値」が表に残る。

LAPS は1時間ごとに自分でポリシーを処理する。Invoke-LapsPolicyProcessing は、それを待たずに今すぐ処理させるコマンドだ。このコマンド自体は結果を返さないので、結果はイベントログで見る。見るのは次の2つ。

イベント ID 意味
10029 新しいパスワードを Entra ID に保存できた
10020 PC のローカルのアカウントを新しいパスワードにした(メッセージにアカウント名が出る)

LAPS は先に Entra に保存してから、ローカルのアカウントを書き換える。今回は2つとも出た。パスワードは Intune/Entra の管理画面の「ローカル管理者パスワード」から見る。

「ポリシーが割り当て済み」でも「アカウントを作った」でもなく、この2つのイベントが出たところで「LAPS が動いている」と言える。新しい PC の手順書には、この5行を足した。

▼手順の順番:LAPS の管理者があるのを確かめてから、利用者を外す

利用者を管理者から外す手順そのものは短い。これも管理者の PowerShell で1行ずつ打つ。

# 1. 今の管理者を確認(LAPS 用の管理者がいるか、ここで見る) Get-LocalGroupMember -SID S-1-5-32-544 # 2. 利用者を外す(名前は 1 の一覧に出たものをそのまま。メールアドレスではない) Remove-LocalGroupMember -SID S-1-5-32-544 -Member “AzureAD\<利用者名>” # 3. もう一度確認(反映は利用者のサインインし直し後) Get-LocalGroupMember -SID S-1-5-32-544

画面(設定 → アカウント → 他のユーザー)から種類を変えてもいい。ただ PowerShell なら、外す前と後の一覧をそのまま見比べられる。今回の抜けに気づけたのも、3の一覧があったからだ。

外しても締め出されないか

Entra 参加の PC では、Entra の役割(グローバル管理者・Microsoft Entra 参加済みデバイスのローカル管理者)が Administrators に残る。その役割を持つアカウントでサインインすれば、管理者として作業できる。作業中だけ権限が要るときは、PIM(Entra ID P2 などのライセンスが要る)で「Microsoft Entra 参加済みデバイスのローカル管理者」を一時的に有効にする。有効にしたあと、PC にサインインし直すと効く。

ローカルの管理者は別に要る

Entra の役割は、Entra のアカウントでサインインできることが前提だ。LAPS 用の管理者がなく、組み込みの Administrator も無効なら、PC の中だけで完結する管理者のアカウントは1つもない。ネットにつながらない場面や、Entra 側のサインインがうまくいかない場面で、使える管理者がゼロになりうる。LAPS 用の管理者は、そういう場面のための鍵だ。

だから順番は、LAPS 用の管理者があることを確かめ(なければ作って LAPS を動かし)、そのあとで利用者を外す。今回は逆の順で進めて、外したあとに気づいた。手順書には作り方の5行を足したが、今は「外す」手順の後ろに書いてある。並びを入れ替えるのは、次にこの手順書を使う前にやる。

▼まだ確かめていないこと

確かめたのは新しい1台だけだ。手順書を書き直した日の時点で、前からある別の PC では、Intune でこのアカウントのパスワードが取れていた(=アカウントがあった)。抜けたのは、自分が書き直した手順書で仕上げた PC で、今わかっているのはこの1台だ。手順書を書き換えたら、まずその後に仕上げた PC を疑う。ただ、前からある PC がすべてそうかはまだ見ていないので、全台も見る。

状態 中身
終わった 新しい1台に LAPS 用の管理者を作り、パスワードが Entra に保存されたことを確認。手順書に作り方を追記
まだ 既存の PC に LAPS 用の管理者があるかの全台確認。前任の管理表に載っているパスワードの記載(今も使える値かは未確認)の扱い。手順書の並びの入れ替え

全台を見る方法は、Intune/Entra の「ローカル管理者パスワード」が出ない PC を洗い出すか、Intune のスクリプトで各 PC の Administrators の一覧を集めるか。どちらで行くかは、まだ決めていない。

次の手:自動アカウント管理

Windows LAPS には、アカウントの作成まで任せる「自動アカウント管理」がある。オンにすれば、今回のような作り忘れは起きない。ただし Windows 11 24H2 以降の機能で、この会社には Windows 10 の PC がまだ数台ある。

もう1つ、オンにすると、ポリシーで指定しているアカウント名は使われなくなり、LAPS は新しく作るアカウント(既定の名前は WLapsAdmin)に切り替わり、今の lapsadmin は LAPS の管理から外れる。しかも新しいアカウントは既定では「無効」で作られるので、今回のように「PC の中だけで使える鍵」として使うなら、有効にする設定も一緒に入れる必要がある。OS で割り当てを分けられるか(Intune のフィルター)と、既存のアカウントをどう片付けるかを確かめてから決める。まだ切り替えていない。

▼まとめ

  • ▶ Windows LAPS は、自動アカウント管理をオンにしない限りアカウントを作らない。PC にない名前を指定してもエラーは出ないので、「ポリシーが割り当て済み」は「パスワードが回っている」の証拠にならない
  • ▶ 前任の手順書を書き写すときは、「このアカウントで」と書かれたアカウントを作る手順がどこにあるかを探す。「使う」手順は残り、「作る」手順は落ちやすい
  • ▶ LAPS が動いたかは、イベントログの 10029(Entra に保存)と 10020(ローカルを更新)で確かめる。仮のパスワードはランダムに作り、記録しない
  • ▶ 利用者を管理者から外すのは、ローカルの管理者があると確かめてから。外したあとはもう一度一覧を見る
  • ▶ 自動アカウント管理はまだ切り替えていない。古い OS の PC と、今のアカウントの扱いを確かめてから決める
📄 前任の手順書と今の運用のずれを一覧にしたときの話はこちらの記事で書いています。
📄 同じ新入社員の PC が、Entra には参加したのに Intune に登録されなかった件はこちらの記事で書いています。

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