FortiGate の SSL-VPN 廃止、設定を読んだら IPsec。止めるべきは別にあった

前回の記事(10月19日)で、「OS を上げると、今の FortiClient の VPN はつながらなくなる」と書いた。販売店の説明も、前任の資料も、社内の ID 管理にあるグループの名前も、そう読めた。

FortiGate の設定を API で読んだら、この会社の VPN は SSL-VPN ではなく IPsec で動いていた。SSL-VPN の廃止は、この会社の VPN には関係がなかった。代わりに出てきたのは、前の保守業者の担当者の VPN アカウントと、もう誰も使っていない VPN の入口だった。

ある会社(30名規模、オフィスに FortiGate 60F)で、設定を書き込めない権限で読み、見つかった残骸を「止めても業務が止まらないか」で仕分けて止めるまでを書く。終わっていないことは、終わっていないと書く。

この記事でわかること

  • ▶ 資料・グループ名・販売店の説明と、機器の設定がずれていたところ
  • ▶ 設定を「書き込めない API」で読んだ理由と、管理画面で同じものを見るなら何を見るか
  • ▶ 前任の残骸を「止めても業務が止まらないか」で仕分けて、戻せる形で止めるやり方
  • ▶ 手順書にして、1人つないで「VPN を通ったか」まで確かめるやり方

▼前回の記事の前提が違っていた:VPN は SSL-VPN ではなく IPsec だった

前回の記事(FortiGate の購入先を変える話)の時点で、この会社の VPN が SSL-VPN だと思える材料は3つあった。設定を読んで、1つずつ答え合わせをした。

そう読めたもの 設定を読んだら
前任の引き継ぎ:「VPN の利用者は FortiGate の管理画面で作る」 合っていた。ただ、それが SSL-VPN か IPsec かは、説明に出てこなかった
社内の ID 管理(Entra ID)に、名前から SSL-VPN 用と読めるグループがあり、30人ほど入っていた FortiGate からは参照されていなかった。昔の名残。当日、棚卸しの直前に、自分も入社のチェックリストに一度「このグループに入れる」と書いていた
販売店:「SSL-VPN がなくなるので、OS を上げると今の FortiClient の VPN が使えなくなる」 SSL-VPN を使っている 60F なら、その通り。この会社は使っていなかった
前回の記事:上の説明を前提に「いずれ IPsec などへの移行が要る」 前提が違った。前回の記事には訂正を追記した

実際の設定はこうだった。FortiClient の VPN は IPsec のダイヤルアップ。利用者は FortiGate のローカルユーザーとして作り、VPN 用のユーザーグループに入れる方式で、ID 管理側との連携(SAML や LDAP)はない。SSL-VPN の設定は残っていたが、待ち受けるインターフェースもポータルも認証のルールも空だった。外から使える状態ではなく、使われてもいなかった。

グループの名前も、資料も、人の説明も、間違ってはいない。ただ、どれも「昔そうだった」か「一般的にはそうだ」を語っている。今動いている設定は、機器の中にしかない。

60F は 7.6.0 から SSL-VPN がない(前回の記事の訂正)

前回は「7.6.3 以降、SSL-VPN のトンネルモードがなくなる」と書いた。これは全機種の話としては正しい。ただ、60F のようにメモリが 2GB の機種は、それより前の FortiOS 7.6.0 から、SSL-VPN がトンネルモード・Web モードとも使えない(Fortinet の 7.6.0 のリリースノート)。60F で SSL-VPN を使っているなら、境目は 7.6.0 になる。IPsec のダイヤルアップは、どちらの変更でも残る。

だから何が変わったか

SSL-VPN の廃止は、機器を入れ替える理由にも、急いで移行する理由にもならなくなった。前回、機器ごと入れ替える提案を今は見送ると決めたが、その判断はむしろ強くなった。

宿題が消えたわけではない。「SSL-VPN からの移行」が、「VPN の認証をどう強くするか」に置き換わった。こちらは機器を替えなくても検討できる。

ついでに言うと、販売店から見積に必須だと言われていたシリアル番号も、前任の資料にはなく、同じ API の応答で取れた。

▼設定は、書き込めない API で読んだ

前任が設定した機器を初めて調べるときは、書き込めない権限で入る。調べている途中で、うっかり設定を変えてしまう事故を構造ごとなくせるからだ。

今回、設定を読んだのは自分ではなく AI エージェント(Claude)だった。だから、なおさら書き込めない鍵にした。画面を何枚もたどるより、同じ問いを一度に投げられて、答えがそのまま記録に残る。

用意したもの

  • ▶ REST API 用の管理者を1つ:管理者プロファイルは全カテゴリ「読み取り」。API を受け付ける送信元は社内の LAN だけ
  • ▶ 鍵の置き場所:Mac のキーチェーン。手順書・チャット・管理シートには値を書かない(シートには「API 用の管理者がある・読み取り専用・鍵の置き場所」だけ)
  • ▶ 読むためのスクリプト:GET しかしない数十行の Python。呼び出しは、たとえばこういう形だ
GET https://<FortiGate の社内のアドレス>/api/v2/monitor/vpn/ipsec Authorization: Bearer <読み取り専用の鍵>

「さっき API のアカウントを作ったから、見てきて」と頼んで、VPN の仕組みと気になる点4つが返ってくるまで約2分だった。その最初の返答で、エージェント自身が「さっき(SSL-VPN の廃止の)影響があるかもと書いたのは訂正する」と直していた。人も AI も、設定を読む前は同じところで間違える。

読めたもの・読めなかったもの

対象 読み取り専用の権限で
機器の状態(型番・シリアル・版)、インターフェース、VPN の設定と接続の状態、ユーザーとグループ、ログ 読めた
設定のバックアップ 403 で拒否された。バックアップは今まで通り管理画面から取る
管理者の一覧 空で返ってきた

あとで止めると決めたときも、最初の書き込みは 403 で弾かれた。読み取り専用はちゃんと効いていた。止めるものを決めてから、そのときに権限を上げて変えた。

API を使わないなら、管理画面で何を見るか

API でなくても、見るものは同じだ。

知りたいこと 見るもの
VPN の方式 IPsec のトンネルの一覧に、FortiClient 向けのダイヤルアップ(リモートアクセス)のものがあるか
SSL-VPN を本当に使っているか 「有効」の表示だけで決めない。ポータル・待ち受けのインターフェース・認証のルールに中身があるか
誰が VPN に入れるか 「ユーザーと認証」のユーザー定義とユーザーグループ。VPN の設定がどのグループを参照しているか

▼VPN を見に行ったら、前の業者のアカウントと、使っていない VPN の入口が出てきた

VPN だけを見に行っても、VPN の周りのものが一緒に出てくる。その場で全部直そうとせず、まず並べた。

  • ▶ 前の保守業者の担当者の VPN アカウントが3件、有効のままだった。VPN のローカルユーザー約40件を ID 管理側の社員と突き合わせて見つかった
  • ▶ Windows 標準の VPN 機能でつなぐ、古い L2TP の入口と、そこからの通信を通す設定が有効のまま残っていた。今つないでいる人はゼロ
  • ▶ クラウド上の基幹システムへの経路は2本ある設計だが、予備の2本目が止まっていた

▼何から止めるか:止めても業務が止まらないかを先に確かめた

前任の残骸を見つけると、「危ないから今すぐ消す」に流れやすい。消す前に、止める候補ごとに「誰に影響するか」「今わかっていること」「戻し方」を1行ずつ書いた。

止めるもの 誰に影響するか 今わかっていること 戻し方
前の業者の VPN アカウント3件(無効化。削除はしない) 前の業者。社外から社内のネットワークに入れなくなる 今つながっていない。残っていたログにも出てこない。ヘルプデスクの契約は8月末で終わっている 有効に戻すだけ
L2TP の入口(通信を通す設定を先に、本体はあとで) Windows 標準の VPN でつないでいる人がいれば、その人 今つないでいる人ゼロ、残っていたログにもゼロ。前任の手順書でも「廃止」扱い。FortiClient の VPN とは別の設定 設定を有効に戻すだけ

「消す」ではなく「無効化」にしたのには理由がある。機器に残っていたログは、ごく短い期間の分だけだった。「最近使われていない」と言えるのは、ログが残っていた範囲だけだ。それより前に誰かが使っていたかは分からない。分からないなら、戻せる形で止める。

前の業者の VPN アカウント3件

ヘルプデスクの契約は8月末で終わっていた。ただ、年内に少しだけ追加のフォローが残っていて、そこで VPN が要る可能性はゼロではない。だから無効化にとどめ、削除はフォローが終わってからにした。

使っていない L2TP の入口

入口の本体と、そこからの通信を通す設定は別物だ。先に通す設定だけを無効化した。本体の設定は、1週間様子を見て、誰からも声が上がらなければ消す予定だ。

変更の前後で比べた

止めたあと、同じ API で状態を読み直した。FortiClient でつながっている人は変更の直前が3人、直後も3人。基幹システムへの経路も、つながったままだった。業務に影響がないことを、感覚ではなく数字で確かめてから次に進んだ。

▼すぐには触らなかったもの:前任が止めていた2本目の経路

基幹システムへの経路は、2本ある設計だった。2本目は通信量がゼロだった。調べると、故障で落ちていたのではなく、FortiGate の設定で手で止められていた。1年以上前の設定の控えでも、すでに止まっていた。

止めた理由は、前任の資料にも引き継ぎの記録にも出てこない。見立てはある。2本とも同じ優先度で設定されていて、そのまま両方を動かすと通信が2本に振り分けられる。行きと帰りが別の経路を通ると、通信が不安定になることがある。それを嫌って1本にしたのではないか。ただ、これは推測だ。

案もある。2本目の優先度を下げて、普段は使わない予備として動かす。それでも、前任が意図して止めたものは、理由が分かるまで戻さない。理由を知らずに戻して基幹システムへの通信が不安定になれば、業務が止まる。触るなら、理由を確かめ、クラウド側の状態も見てから、業務時間外にやる。

▼手順書にして、新しく入る社員の分で「VPN を通ったか」まで確かめた

棚卸しは、手順書にして初めて次の人に渡せる。そして手順書は、実際に1人追加してつないでみるまで、正しいかどうか分からない。

書いたこと・直したこと

  • ▶ VPN の利用者の追加:FortiGate でローカルユーザーを作り、VPN 用のユーザーグループに入れる。前任が設定していたが、手順書には載っていなかった
  • ▶ 退職のとき:同じ画面で無効化し、グループから外す
  • ▶ 入社のチェックリストと退職の手順を直した:「ID 管理のグループに入れる/外す」と書いてあったのを消した。そのグループは VPN の認証に使われていない

PC 側の FortiClient の設定値は手順書にだけ書いた。ここには載せない。

確認の落とし穴:「つながった」と「VPN を通った」は別

新しく入る社員の分を1件作り、入社する社員に渡す前の PC で、FortiClient の接続を作ってつないだ。つながって、VPN 用のアドレスも配られた。基幹システムを開くと、ログイン画面まで出た。

ただ、このとき FortiClient の受信は 0KB のままだった。画面が出ただけでは、その通信が VPN を通ったのかどうか分からない。

そこで2つで確かめた。

  • ▶ 基幹システムに確認用の ID でログインして、メニューまで出るか
  • ▶ FortiClient の受信バイトが増えるか(今回は 0KB から約10KB に増えた)

両方そろって、初めて「VPN を通って届いた」と言える。

もう1つ、社内の Wi-Fi につないだまま試すと、VPN を通らなくても社内のシステムに届いてしまう。手順書には、スマホのテザリングなど社外の回線から試す、と書いた。

▼今の状態と、まとめ

項目 状態
VPN の方式を設定で確かめ、利用者の追加・停止の手順書を書いた 済
ID 管理側の使われていないグループを、入社・退職の手順から外した 済
新しく入る社員の分を作り、VPN を通って基幹システムに届くことを確かめた 済
前の業者の VPN アカウント3件 無効化済み。削除は年内のフォローが終わってから
使っていない L2TP の入口 通信を通す設定は無効化済み。本体は1週間様子を見てから消す予定
  • ▶ VPN の方式は、資料・グループ名・販売店の説明で決めない。機器の設定を読む。今回は SSL-VPN ではなく IPsec だった
  • ▶ 前任が設定した機器には、まず書き込めない権限で入る。AI に読ませるなら、なおさら。書き込める権限は、止めると決めたときだけ上げて、終わったら戻す
  • ▶ 見つけた残骸は「誰に影響するか・今わかっていること・戻し方」で仕分け、無効化で止める。削除はあと
  • ▶ 前任が意図して止めたものは、理由が分かるまで戻さない
  • ▶ 棚卸しは手順書にして、1人つないで「VPN を通ったか」を受信バイトで確かめるまでが一組
📄 この記事の前提になった、FortiGate の購入先を変える前に確かめたことと、入れ替えの提案を見送った理由はこちらの記事で書いています。
📄 前任の手順書と今の運用のずれを一覧にしたときの話はこちらの記事で書いています。

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「前任が設定していったファイアウォールや VPN が、今どう動いていて誰が入れるのか、説明できる人がいない」——そういった段階からお気軽にどうぞ。設定を書き換えずに読むところから、一緒に棚卸しします。

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